「ロービジョン」とは
視覚」と「ロービジョン」
視覚(モノを見る機能)とは、視力(モノを見分ける力)、 視野(モノを同時に見渡せる範囲)、色覚(色を識別する感 覚)の3要素から成り立っています。この3要素のどれかが障 害される、あるいは複合的に障害されることで、視覚は低下してしまいます。ロービジョンとは、全盲とまではいかないまで モノをも、何らかの視覚障害によって日常生活に不自由を感じており、見分ける なおかつメガネやコンタクトレンズだけでは視力矯正が困難な力状態をいいます。
■「視覚」モノを見る機能
視力・・・モノを見分ける力
視野・・・モノを見渡せる範囲
色覚・・・色を識別する感覚
「ロービジョン」の定義と課題
WHO(世界保健機関)の基準では「(メガネ・コンタクト等で視力矯正しても)両眼で0.05以上、0.3未満の状態」となっていますが、ロービジョンの定義は、各国においてまだ確立していないのが現状です。 日本では、視覚障害による身体障害者手帳を持つ方が約31万人という報告がありますが、この交付率は決して高いとはいえません。また、日本眼科医会では、視覚障害の定義に該当する方が164万人、このうち ロービジョンに該当する方は145万人と推察しています。 ロービジョンは、約1割占めると言われる「全盲者」と「弱視者」に大別されます。さらに弱視には、先天性または幼少時に適切な刺激を受けることができなかったため生じた「医学的弱視」と眼の病気によって生じた回復困難な視力障害である「社会的弱視」があります。ここで大きな課題になるのは「社会的弱視」の認知度がまだまだ低い点です。身体障害者手帳の取得者は幼少時からの「医学的弱視」の方がほとんどで、 「社会的弱視」の方は当事者すら認識がなく、適切な処置を取っていない場合が非常に多いのです。ロービジョンの方が認定を受けられるか否かは、その方のQuality of Life(生活の質、人生の質)を大きく左右し ます。ロービジョンは、老化による眼の疾病から生じるケースも多いため、社会の高齢化が進む中でますま す正しい認識と適切な対策が重要になってきています。
■視覚障害認定者数 約31万人
・日本では身体障害者福祉法に基づく
・両眼視力の和に視力損失率を加味した基準
・視覚障害の程度で1級から6級まで
■全盲者 約3万人
・視覚を用いて日常生活が出来ない方
■弱視者(視覚を用いて日常生活が困難な方)約28万人
医学的弱視・・・先天性または幼少時に生じた弱視
社会的弱視・・・眼の病気によって生じた弱視
視覚障害者の認定が重要な理由
「視覚障害者」の認定はなぜ必要か
当事者や家族、周囲の人々に「ロービジョン」に対する認知や理解があるか否かによって、その方のQuality of Life(生活の質、人生の質)は大きく変わってきます。なかでも重要なのは「視覚障害者」の認 定を受け、身体障害者手帳を取得すること。このことによって、適切なロービジョンケアを行いながら安定した生活を送るための多様な支援制度を受けることができます。今、必要なのは、当事者はもとより家族や周囲の方々も正しい認識を持ち、ロービジョン潜在層の方々の1日も早い対応をサポートすることです。
「視覚障害者」の等級制度とは
当事者や家族、周囲の人々に「ロービジョン」に対する認知や理解があるか否かによって、その方のQuality of Life(生活の質、人生の質)は大きく変わってきます。なかでも重要なのは「視覚障害者」の認 定を受け、身体障害者手帳を受け取ること。このことによって、さまざまなサポート制度を受けることができるからです。身体障害者手帳を取得すると、補助具および日常生活用具購入に際して補助金が支給されるのもそのひとつです。身体障害者手帳の取得者は「全盲」の方という先入観を持たれがちですが、交付基準は、1級から6級までの段階があり、不自由さの程度によって交付されます。(下表参照)
・両眼の視力とは、万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある方については、矯正視力について測ったものをいう。・両眼の視力は、両眼視によって累加された視力ではなく、それぞれの視力を別々に測定した数値であり、両眼の視力の和とはそれぞれの測定値を合算したものをいう。
・視力が0.01に満たないもののうち、明暗弁(めいあんべん)のもの又は手動弁(しゅどうべん)のものは視力0とし て計算し、指数弁(しすうべん)のものは0.01として計算する。
※各級とも各項目のいずれかに該当する方 ※厚生労働省の身体障害者福祉法の基準による
適切なロービジョンケアのために
大人の「ロービジョン」は早期発見が大切
成人してからの「ロービジョン」は、主に眼の病気が原因です。主に「緑内障」や「糖尿病性網膜症」「網膜色素変性症」「加齢⻩斑変性症」「網膜はく離」などが原因ですが、いずれも自覚症状がほとんどないため、治療せずに⻑期間放置していて「失明」に至ることも珍しくありません。なかでも、わが国の失明原因第1位の「緑内障」は、40才以上の30人に1人の割合で発病し、8割の人は発病が未発見のまま放 置されているといいます。「緑内障」は、一般に発症してから失明まで10年〜20年 程度かかるもので、少しずつ視野が狭くなり、進行すると視野はほとんど中央のみで、視力も低下したロービジョン状態となります。早期発見によって失明のリスクは小さ くなるので、定期検査を行うことや、少しでも異変があればすぐ専門眼科医の診療を受けることをお勧めします。
身体障害者手帳の取得について
視覚障害者等級表(前頁参照)を基準とした視力・視野の程度に よって、視覚障害が認定されると「身体障害者手帳」が交付されます。 該当する方は、下記の要領で手続きを行うことができます。
①市区町村で、「身体障害者診断書・意見書」と「身体障害者手帳交付等申請(届出)書」をもらう。
②病院に「身体障害者診断書・意見書」を提出し書類に記入をしてもらう。
③書類が揃ったら、市区町村の申請窓ロヘ提出。認定後、身体障害者手帳が交付される。
視覚障害者の認定を受け、身体障害者手帳が交付されると、医療費 の軽減、税金の軽減、補装具の購入時の補助、交通機関の割引等と いった自治体等のサポート制度を利用できます。但し、障害の度合い や市町村によって多少内容が異なるため、確認が必要です。
補助用具(日常生活用具+補装具)の購入までの流れ
ロービジョンの方が、たとえわずかでも残された視機能を最大限に活用して、可能な限り自立した快適な生活を送れるよう支援することを「ロービジョ ンケア」といいます。視覚障害によって身体障害者 手帳を取得すると、視覚を補助する用具の購入時に補助金を受けることができるのもそのひとつです。用具を購入する際の手続きは、右図のようになります。補助用具については、「弱視眼鏡給付指定店」となっているメガネ専門店で購入することがで きます。
ロービジョンケアのための補助用具としては、安全つえ(白杖)やルーぺ、遮光眼鏡、携帯型拡大読書器などが挙げられますが、視覚障害の度合いや自治体によって多少異なる場合があります。自治体の福祉課にて詳細を確認後、眼科の専門医や信頼できるメガネ専門店に相談し、適切な補助用具を購入していただくのが良いでしょう。
※補装具購入時の申請には専門医の意見書が必要