第二部: 「眼のお悩み・疑問に関するパネルディスカッション」
コーディネーター
西沢邦浩さん(日経BPヒット総合研究所 主席研究員)
パネリスト
松本伊代さん(タレント・歌手)、川北哲也先生(北里大学北里研究所病院眼科部⻑)、束原俊哉 (株式会社メガネスーパー 取締役)
第二部は、「眼のお悩み・疑問に関するパネルディスカッション」
日経BPヒット総合研究所 主席研究員 西沢邦浩さんが進行を務め、前出の川北哲也先生、ゲストの松本伊代さんを交えて、一般参加者からいただいたアイケアに関する質問に答える形式で行われました。
「日本人は近視になりやすいというのは本当ですか?」 「メガネはどこで買っても同じですか?」というような質問に、川北先生や⻄沢さんは専門家の立場からのアドバイス、 松本さんはご自身の経験談を交えての和やかなディスカッションとなりました。
「眼のお悩み・疑問に関するパネルディスカッション」
<松本伊代さんからの質問>近視とそうでない家族がいるのはなぜ?
「私は小6くらいから近視なのですが、両親は近視ではないんです。また、長男は近視ですが、次男はそうではありません。主人も乱視はあるけれど、近視ではないんですね。近視は、遺伝によると聞きますが、必ずしもそうではないようです。どのような影響で近視になるのか教えてください」
<川北先生> 「もちろん、遺伝もひとつの要素ではありますが、ほかにも原因はあります。環境要因として今、注目されているのが、2時間外で遊ぶのを1年間続けた子どもの方が、そうでない子どもより近視率が低いという研究結果が出ています。近視の原因は、眼軸長という眼の奥行きが伸びてしまうことで起こります。ですから子どもの頃に近視を防ぐには、いかに眼軸長を伸ばさないようにするかということになります。 眼軸長が伸びるのを防ぐ『アトロピン』の点眼薬を使うのも予防策のひとつです。適正なメガネやコンタクトレンズをかけることも近視の進行を少し遅らせることができます。先ほど外で遊ばせることも有効であるとお話ししましたが、日光を浴びることでドーパミン(快感、やる気、学習能力、運動機能や記憶力といった働きを司るホルモン)が分泌され、眼軸⻑が伸びるのが抑制されるといわれています。 また逆に、外出をせず、屋内にこもってパソコンやスマホ、学習などで近見作業を⻑時間行うことは、良くない影響を及ぼすことが考えられます」
<メガネスーパー 束原> 「メガネ専門店の立場としては、まず、既製品でなく、オーダーメイドのメガネを作っていただくことが重要だと考えています。窮屈な洋服を着たり、靴を履くのと同じで、自分に合わないメガネをかけることは眼に悪い影響を及ぼします。遠くが見える、近くが見えるという視力だけでなく、どういう使い方をするのかによってもレンズの調整が必要ですし、眼の状態に応じてレンズの位置を合わせたり、フレームの選定やフィッティングもお客様によって変わってきます。その辺りは、川北先生は眼科医の立場からどのようにお考えでしょうか」
<川北先生> 「先ほども少し触れましたが、距離の合っていないメガネをかけることは、近視にも悪い影響を及ぼすことが考えられます。ほかにも身体の疲れや不調などを引き起こす原因になります。そのような場合は、メガネの調整が必要です。また、パソコンやスマホなどの⻑時間作業など、さまざまな生活習慣を見直すきっかけにもしていただきたいと考えます」
<松本さん> 「たしかに近視の長男は、部屋でビデオを見たりして過ごすのが好きで、近視でない次男は外で野球などをして過ごす時間が長かったです。そのようなことも影響していたのかと今、思いました。近視の進行を予防する点眼薬があるというのも興味深いです」
<西沢さん> 「一般的に、長男は次男よりも親からの学習投資が多いため、近視率が高いという調査データもあるんです。次男は、長男ほど干渉されず伸び伸び遊ぶ機会に恵まれやすいのかもしれません」
<川北先生> 「室内に居る時間が長い、勉強する時間が長いという点で見れば、それは当てはまるかもしれませんね」
<西沢さん> 「近視対策としては、子どもの勉強時間を効率化して外で遊ぶ時間を作ることも必要かもしれませんね。それにしても、現代社会は子どもが近視になりやすい環境であることを再認識しました。一方、医療や技術革新も進み、点眼薬を使った治療を行ったり、適切なメガネやコンタクトレンズをオーダーすることで、近視の進行を抑制できる可能性があるという点には期待が持てました。」
「近視」についてのまとめ
- 子どもの頃に近視を防ぐには、いかに眼軸長を伸ばさないようにするかが重要。
- 眼軸長が伸びるのを防ぐ『アトロピン』の点眼薬を使うのも効果的。
- 適正なメガネやコンタクトレンズをかけることで進行を抑制できる可能性がある。
- 子どもは外で遊ばせた方が近視率が下がるという研究結果もある。