「エイジングUpdate-臨床研究でみえてきた地平」久保 明先生 特別講演のまとめ
眼をエイジングという観点から捉えるために、最先端の臨床研究について知る
今回は、ディスカッションを行う前に、眼をエイジングという観点から捉えるために、アンチエイジング医学に取り組む医学博士 久保 明先生を迎え、臨床研究のトピックスについてお話をうかがいました。
講演者プロフィール
医療法人財団百葉の会 銀座医院 院長補佐・抗加齢センター長久保 明 先生
1979年慶應義塾大学医学部卒業。
1988年米国ワシントン州立大学医学部動脈硬化研究部門に留学。帰国後、一貫して予防医療とアンチエイジング医学に取り組む。 「高輪メディカルクリニック」を設立し16年間院長を務め、現在は医療法人財団百葉の会 銀座医院など都内で診療を行う。
人の老化度を科学的に測るエイジングドックを開発し、銀座医院では「プレミアムドック」を立ち上げ、その結果に基づく運動・ 栄養・点滴療法などを実践している。また、サプリメントやスポーツ医学の世界最先端の情報と実践を駆使した講演や企業のアドバイザーとしても活動。
今後、超高齢社会おいて具体的なテーマとなるのが、
1.認知症
2.フレイル(高齢者の日常生活に支障を来たす虚弱)
3.ホルモン障害の3つ。
そして、その大元となるのが、動脈硬化と老化という認識で、私たちはエイジングに立ち向かおうとしています。2014年の平均寿命は、男性80.5歳、女性86.61歳ですが、健康寿命は、男性71歳、女性74歳。男性は約9年、女性は約12年の差があるのが課題。さらに今後は『能力長寿』という考え方が必要です。
老化のキーワード。老化とは、炎症とか免疫が関与しているプロセスだと考えられます。
腸内フローラとさまざまな臓器との関連が注目されています。眼についての相関はまだ解析されていませんが、そういうところを見るのも面白いと思います。
疾病の成り立ちは、バイオマーカー(リスク)、サロゲートマーカー(中間的なマーカー)、イベント (最終的な疾病)と、老化の指標を細かく分けて考える必要があります。私たちの老化を評価する臨床的な指標はかなり細分化されており、それがどの部分に入るのか整理する必要があります。
フレイル(高齢者の虚弱)とサルコペニア(筋肉量減少と筋力低下)、ロコモティブ(運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態)が密接に関係していることが注目されています。とくにフレイルは、うつと関係があるということも見逃せません。
わずか2週間、食生活の習慣を変えることで免疫年齢が下がることが認められました。但し、死亡率に各種栄養素が有意な効果を発揮した場合と、有意無し、あるいはリスク上昇した場合もあります。サプリメントは副作用の報告もあり、注意が必要です。
認知症と身体活動の相関について…。平均85歳の男女の集団に、2ヵ月半ほど運動のアプローチを行ったところ、ある程度握力や運動能力に改善が見られたという調査結果があります。高齢であっても、 生活習慣や運動によって変えられる可能性があります。
今年アメリカの医療情報誌では、フレイルに対する栄養、身体活動、認知療法の介入効果によって、 ひざや歩行速度などに改善が見られたという発表がありました。
エイジング臨床研究の課題は、この3つ。
1.臨床的指標の定め方をきちんと行い、ブレが生じるのを防ぐ。
2.ソリューションの確認法。薬はもとより、生活習慣などによる改善をいかなる方法で行うか。
3.サイエンスは1年後に変わることがあり、一般の方たちとの整合性を取ることが難しい。
そのほか、話題のサプリメントや栄養素と、疾病やエイジングの相関についての調査結果や経過報告、 遺伝子などの興味深い話題が多数あり、参加メンバー一同、眼の健康延伸への効果も期待が高まると共に アイケアにおけるエビデンスの重要性を再認識する機会となりました。